企業の皆さまの中には、既存事業と農業分野を組み合わせて、社会で起きている課題解決に貢献したいと考えている方々もいらっしゃるかと思います。そのように考えた際に、現代では「SDGs」は切り離せない要素の一つではないでしょうか。

今回のコラムでは、農業参入を検討している企業の方々に知っていただきたいSDGsと農業の関連性と、2020年から取り組むイノチオグループのSDGsについてご紹介します。

SDGsとは?

SDGsは、「Sustainable Development Goals」の略であり、2015年に行われた国連総会にて、加盟している193カ国すべての国が賛同した国際目標です。
日本では、「持続可能な開発目標」とも呼ばれています。

SDGsは、世界中で起きている「社会」「環境」「経済」などの課題を解決するために策定された17の目標と169のターゲットが設定されています。

参考:外務省ホームページ SDGsとは?

SDGsで期待される農業の役割

国連に加盟する各国の取り組みをまとめた「Sustainable Development Report 2022」によると、現時点で日本が達成している目標は、「目標4 質の高い教育をみんなに」「目標9 産業と技術革新の基礎をつくろう」「目標16 平和と公正をすべての人に」の3つです。

前述17目標中、達成しなければならない目標は14個残っており、その内容も「社会」「環境」「経済」など多岐にわたりますが、特に農業は「環境」の課題解決に貢献できます。
しかしそれ以外にも、SDGsを意識した農業を行うことによって、食料生産や地域の雇用問題などの「社会」や「経済」に関する課題解決にもつながります。

参考:Sustainable Development Report 2022

では、実際に農業参入をすることで、どのような課題を解決できるのか解説していきます。

社会課題:食料供給

食料の多くを輸入に頼っている日本にとって、食糧供給は取り組まなければならない重要課題の1つです。この課題を解決するためには、作物の安全性向上や品質の確保が求められます。

また、四季や気象災害のある日本では、このような気象条件や天候の影響を受けにくい作型や作目、栽培方法の検討も視野に入ってきます。

このような課題を解決するには、露地栽培りも自然環境の影響を受けにくく、環境管理がしやすいビニールハウスの方が栽培に向いていると言えます。環境制御システムなどのスマート農業技術を活用することで、季節や気候の変化に対応した作物に最適な栽培環境を整えることで、安定した収穫量を確保できます。

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環境課題:土壌汚染

作物作物を栽培する中で、環境に負荷をかけてしまうこともあります。例えば、病害虫予防の観点、作物の生育の観点から、多くの農薬や化学肥料を使用してしまうケースもあります。

青果物の成長や外見評価を重んじるあまり、必要以上の化学農薬の散布や、化学肥料の施肥を行った結果、土壌汚染や水質汚染につながる危険性もあります。

有機栽培や無農薬栽培だけでなく、農薬や肥料の適正利用を行うことで環境負荷への課題解決にもつながります。

参考:JCPA農薬工業会 IPMとは?

施肥に関する一つの解決策として、養液供給の自動潅水システムを導入することで、作物が必要とするタイミングで灌水と肥料等の養液供給を行うことができます。そうすることで、作物と環境に配慮した農業が実現できます。

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経済課題:後継者不足・雇用創出

近年、農業従事者の高齢化や後継者不足などの人手不足が課題となっています。一つの理由としては、「収入が安定しない」「休みが取れない」「重労働」などの古くからのイメージがあげられます。

改善するためには、積極的なスマート農業の導入による負担軽減や農業経営への支援、就農を希望する人への雇用機会をつくることなどが大切でしょう。企業を中心に数年前から働き方改革の動きが活発になっているように、すでに農業界でも同様の取り組みが始まっています。

例えば、ある作業に対して、どれくらいの時間と人が必要なのか、これをデータとして視える化する農業専用の労務管理システムも普及してきており、積極的に導入もはじまっています。

必要経費の高騰が続く昨今、収益性を高めるには、計画通りの栽培と労務管理の最適化が求められています。さらに、担い手や労働力の減少などの課題が重なり、大規模農場や組合単位、行政単位、そして個人農業者からも、労務管理システムが注目を集めています。

労務管理ソフト agri-boardを見る

企業が農業参入を成功させる秘訣

SDGsにおいて期待される農業分野の役割は、多岐に渡っています。各企業が取り組む事業と関連付けることで解決できる内容はさらに拡がっていくと考えられます。

日本政策金融公庫が発表した過去の資料※1によると、参入企業の76.7%が赤字であるという調査結果がでています。経営に課題を抱える企業が多いのが実情です。

一方で、同じく日本政策金融公庫が出している食品関連企業への調査資料※2によると、4割近くの37.9%が5年以内に黒字化したと回答しています。
正しいプロセスで経営をしていくことで黒字化は十分可能です。

農業分野は専門性の高い分野であるため、企業単独で参入を考えるのではなく、栽培や経営などの専門知識と、参入後のアフターフォローが充実したパートナーと手を組むことで、農業参入を成功に導きやすくなります。

※1 平成23年度企業の農業参入に関する調査結果(日本政策金融公庫 平成23年1月)
※2 食品産業動向調査・農業参入(日本政策金融公庫 平成30年10月)

イノチオグループが取り組むSDGs

イノチオグループは、2020年度からの経営方針にSDGsを取り入れています。
創業110年以上の事業活動を通じ、お客さまをはじめとする農業者と地域社会の持続可能な発展をサポートしていきます。

顧客視点での価値創造

「世のため人のために尽くす」と語った創業者の想いは、創業の精神として今も大切に受け継がれています。農業の現場がかつてないほど多くの問題にさらされている今、生産者の声に耳を傾け、寄り添い、解決のために全力でサポートする。私たちは、各地域でいちばん頼りになる農業総合支援企業を目指しています。

持続可能な農業を次世代へ
自社農場のイノチオファーム豊橋とイノチオファーム田原では、グローバルGAPを取得しています。グローバルGAPとは、食品安全・労働環境・環境保全に配慮した「持続可能な生産活動」を実践する優良企業であることを示す農業の国際認証です。

その他1農場では、GFSIより認証を受けたアジアGAPを取得しています。グローバルGAPに沿った農業を行うことは、栽培から出荷までに起こりうるあらゆるリスクを事前に防ぐことにつながります。

農場で働くスタッフ一人ひとりが、GAPへの理解を深め、組織として取り組むことで、認証更新のための審査で、2年連続の「是正項目ゼロ」を達成しました。イノチオグループでは、自社で取得したノウハウと経験を活かし、認証取得を目指す方々のサポートも行っています。また、イノチオファーム豊橋では施設視察の受け入れも行っています。

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続けられる農業を支援
イノチオアグリでは、ビニールハウスやスマート農業システムだけでなく、農薬や資材の自社商品開発に取り組んでいます。高品質なハウスや資材やサービスを価値あるカタチで提供することで、持続可能な農業に貢献したいと考えています。

そのような考えのもと、農業用ハウス内張りカーテン「なつみスクリーン」シリーズは、設備投資に悩むお客さまの声をもとに発されました。

ペットボトルのリサイクル樹脂を採用し、製造時のCO2発生を抑えた商品もあります。今後も、お客さまの農業経営と栽培のお役に立てる自社商品開発に取り組んでいきます。

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アジア農業の活性化、現地雇用の創出
イノチオグループでは、アジア圏でも特に発展の著しいラオスの現地企業と提携し、ラオスでの農場経営に着手しています。日本の農業生産技術を輸出することで、世界で農業を支える人材を育成し、アジアの農業の活性化と現地雇用の創出を目指しています。

農業を取り巻く環境や気候が異なるラオス、その特徴を活かし、付加価値のある作物の生産と流通の確立に今後と取り組んでいきます。

環境再生型農業

環境問題は、いまや緊急に取り組むべき大きな課題です。そして、環境に密接なかかわりを持つ農業分野には、課題解決に向けて大きな期待が寄せられています。

農業を総合的に支援する企業グループを目指すイノチオグループでは、農業が環境に与える負荷の低減に取り組むと同時に、その負荷を上回る生態系の修復・保全につながる農業の実現に挑戦しています。

資源を有効活用した農業の実現
自社開発のスマート農業システムであるビートシリーズは、最適な灌水と養液供給を行える灌水制御盤アクアビートと、生産者目線で開発され最大10区画まで対応可能な環境制御装置エアロビートをメインに構成されています。

ビートシリーズの活用によって、ビニールハウス内外の環境と培地・土壌内の環境を見える化します。そのため、作物にとってより良い栽培環境を作り出します。また、灌水・養液供給の面でも最適なタイミングで必要な給液が行えるので、肥料などの資源を無駄なく使用できます。

関連製品:AERO BEAT

農業の“働き方改革” を推進
株式会社はれると(イノチオグループ)が開発した労務管理システムagri-boardを活用することで作業時間の最適化や経費・労務費の削減を行い、施設園芸の労務管理・目標管理から「ムリ」「ムラ」「ムダ」をなくすことをサポートします。

さらに作業進捗や実績の視える化 など、コスト削減だけではなく生産性改善に向けた新しいアプローチを提案します。自社農場でも導入し、年間1,200 時間の作業時間削減を実現しています。

未利用資源を活用した肥料開発
農薬・肥料を専門に扱うイノチオプラントケアでは、魚のアラや食品残さ、家畜ふんなどを活用した有機肥料を開発しています。

有機肥料は化学肥料と比べ肥効が緩やかで、微生物のエサとしても働き、土壌を豊かにします。環境にやさしい土づくりを通して作物にとっても居心地の良い環境を作ります。

また、ICM(総合的な作物管理)事業として、IPM植物保護、土壌環境管理を行い、土壌と植物の健康を守るとともに、スマート農業の普及支援による効率化を提案し、地域の持続可能な農業生産を支援しております。

農薬・肥料事業を見る

企業の農業参入を支援

イノチオアグリについて

イノチオアグリはビニールハウスに携わり、50年以上の知見がございます。50年以上に渡り、培ったノウハウを活かし、企業の農業参入を計画段階からご支援しております。

お客さまのご要望や条件に基づいてビニールハウスを設計し、栽培方法や作業計画を一緒に考え、事業収支の試算までの事業計画の策定をお手伝いします。

さらに、圃場研修や専門指導員によるサポートで、事業開始の準備期間から栽培開始後の運営管理や労務管理に至るまで、農業ビジネスの最前線で培ったノウハウを活かしてお客さまの農業参入をトータルサポートします。

ビニールハウス事業

イノチオアグリでは作物や栽培方式、土地環境に沿ったビニールハウスをご提案。10年間に渡る収量や収益性の試算からお客さまの理想を実現するビニールハウスとスマート農業製品などを含めたハウス内部設備、農業経営の開始後までトータルでご提案いたします。