近年、さまざまな理由から農業分野に興味を持つ方が少しずつ増えてきています。
そこで気になるのはやはり生活や事業運営に関わる「お金=収入」ではないでしょうか?
今回のコラムでは、儲かる農家・農業のポイントと、利益率の高い作物についてご紹介します。

目次

  1. 農家・農業は儲かるのか?
  2. 儲かる農家・農業の特徴とは?
  3. 農業で儲かる作物と利益について解説
  4. 儲かる農家・農業は施設園芸を選んでいる
  5. イノチオアグリのビニールハウス事業
  6. 儲かる農業の実現に向けてサポートします!

農家・農業は儲かるのか?

「農業・農家は儲かるのか?」このような疑問をこれから新規就農や農業参入を検討されている方であればお持ちではないでしょうか。
はじめに、農業の収入事情について解説していきます。

農家・農業の平均所得

農林水産省から発表されている「農業経営統計調査」を見ると、2021年度の個人農家と法人経営体を合わせた全ての農業経営体における平均所得は125万4,000円となっています。そして、個人と法人で分けると、個人農家の平均所得は115万2,000円、法人経営体での平均所得は424万5,000円となります。

農業の現場では、施設園芸であればビニールハウスや栽培システム、露地栽培であればトラクターをはじめとしたが必要になるため、それらを導入するのに多大なコストがかかることは言うまでもありません。

全農業経営体の平均所得125万4,000円は、粗収益1,076万9,000円から農業経営費951万5,000円を差し引いた金額となっています。

参照:農林水産省-農業経営統計調査

農業経営体によって所得は変わる

上記で平均所得をご紹介しましたが、注目していただきたいのは農業分野の所得には大きなばらつきが生じていることです。

経営体によって、1,000万円以上の利益を生み出している農業経営体もあれば、反対に赤字になってしまっている農業経営体もあります。

また、個人経営体でも、主業経営体(世帯所得の50%以上が農業所得)の平均所得は434万円と農業への比重により大きく所得格差があることが見受けられます。異業種同様に、農業は規模や形態、地域によって状況は大きく異なり、経営体ごとでも多様です。

例えば、兼業農家として別事業での収入があり、農業を本業としていない経営体もあります。平均所得は、兼業農家なども含めた金額のため、農業だけで生計を立てていくのであれば平均よりも高水準の所得を目指せる余地は十分にあります。

実際、「令和2年 農業経営体の経営収支」によると、全農業経営体の所得平均は123万6,000円ですが、対象を専業農家に絞ると平均は415万6,000円になります。

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コストパフォーマンスの重要性

農業においても費用対効果=コストパフォーマンスの重要性が高まっています。

何をどのように育て、出荷するかによって、かかる時間や労力は大きく異なります。もちろん所得額そのものも大切ですが、その所得を生み出すために割いた時間コストや人材コストも無視してはいけません。

これまでのように休みを返上して労働時間を伸ばすことで無理やり成り立っている経営では、継続していくことは不可能でしょう。

労働時間に対しての所得比率も加味した上で、儲かる農業の実現を目指しましょう。

儲かる農家・農業の特徴とは?

それでは、「儲かる農業・農家」の特徴はどのようなところにあるのか。
ここでは5つのポイントをピックアップしてご紹介します。新規就農や農業参入を検討される際の参考になる情報となります。

単価の高い作物を選んでいる

農作物によって販売価格や生産に必要な設備や資材が異なります。需要と供給のバランスにもよりますが、必然的に高単価を実現しやすい作物と、そうでない作物が生まれることになります。農業所得の高い経営体の中には、高単価の作物を選んで作っているところが多く含まれています。

農林水産省から発表されている「品目別経営統計」によると、生産している作物別に農業経営体の所得が公表されており、作物の種類ごとに比較することが可能です。

例えば、ビニールハウスで育てる施設野菜をみると、ミニトマト(202万8,000円)、いちご(189万8,000円)、なす(169万4,000円)の順になっています。

施設野菜は果菜類が中心で、10a当たりの農業所得は露地野菜に比べると比較的高い水準にありますが、同時にハウスの管理費といった農業経営費がプラスでかかってくるのが特徴です。

また、露地野菜の場合、10a当たりの農業所得は、ししとうが142万8,000円と最も高く、次いでなすが122万6,000円、きゅうりが118万5,000円といった順になっています。

果菜類では、玉ねぎ(11万1,000円)、白菜(12万4,000円)、大根(14万円)といった根菜類や葉茎菜類に比べると収穫量が多く、販売価格が比較的高い水準にあるため、農業所得が高くなります。

参照:農林水産省-品目別経営統計

スマート農業を活用して経費を削減している

生産にかかる経費を削減することができれば、売上に対する利益を増やすことができ、結果として儲かる農業に近づきます。

農業分野における経費削減の例としては、スマート農業の技術を活用して、消毒や養液といった作業を自動化することで人件費を削減したりといった取り組みが行われています。

スマート農業の技術の導入は効率向上と経費削減の両方を見込めることから、注目をされるようになりました。導入コストが発生するものの、長い目で見て経費を抑えて利益を生み出せるような農業経営を行うために、農業へのスマート農業の技術導入は必須となっています。

関連記事:今日からはじめるスマート農業~ゆとりある農業で経営改善~

栽培方法が確立されている

同じ作物を作る場合でも地域によって育て方が異なります。これは、北海道と沖縄で気候が全く違うように、日本列島が東西南北に長く広がっていることが大きな要因です。

そのため、同じ作物であっても地域に合った方法で栽培することが非常に重要です。高い収益を維持できている農業経営体の場合は、栽培地域や作物に合わせた栽培方法が最適化されている傾向にあります。

一方で、なかなか収益が上がらず、経費ばかりがかさんでしまっている場合には、ビニールハウスの使用有無や土づくりの仕方などを見直す必要があるかもしれません。

6次化など付加価値がある農業経営をしている

近年、これまで通りの農作物の生産に特化した1次産業から、加工や販売、サービスまでを一貫して担う「6次産業」に変わる農業経営体が増えてきました。

1次産業のみの場合、卸売市場の相場変動の大きく影響を受けることが多くありました。一方、6次産業の場合は、販売までの決定権を生産者が持つことによって高い売上を見込むことができます。

また、生産だけでは得ることができなかった収益を得られることも6次産業化の特長です。儲かっている農業・農家は、こうした新しい取り組みにも積極的にチャレンジしています。

農業で儲かる作物と利益について解説

栽培方法、代表される作物から農業で儲かる作物と利益について、平成19年まで調査が行われていた農林水産省の「品目別経営統計」をもとにご紹介します。

ミニトマト(施設栽培)

施設野菜作も露地野菜作と同様に、2007年の「品目別経営統計」で見てみると、農業粗利益が最も高い作物は407万円のミニトマトで、最も低いスイカの75万円と比較して332万円の利益を上げています。

ミニトマト栽培における労働時間は1488時間で、最も多いシシトウの2983時間や、イチゴの2092時間に比べるとかなり少ない労働時間となっています。時給換算をしても、ミニトマトは約1400円と最も高収益の出る作物となっています。

施設野菜は全体的に高水準にあり、収穫期間が長くて収量も安定していることが大きなメリットだといえます。

しかし、施設栽培はビニールハウスや内部設備などの導入コストをはじめとする経費が経費も高く、そのほか加温に使う燃料や電気代、補修や張替の費用が必要となってきます。

キャベツ(露地栽培)

露地栽培で最も高い農業粗利益が出るのはシシトウで、10a当たり201万円、最も少ない大根や玉ねぎが32万円であるのに比べて169万円もの利益が出る計算です。
しかし、シシトウは労働時間も全品目の中で圧倒的に長く、合計で2,155時間かかります。

そこで農業粗利益から経費を差し引いた所得を労働時間で割って時給を算出すると、キャベツが時給2,000円で最も高収益であることがわかりました。

キャベツは農業粗利益が10a当たり39万円と低いですが、経費が少ないことと労働時間が90時間に抑えられることが高収益の要因となっています。

またキャベツは栽培に求められる技術もあまり高くなく、初心者が取り組みやすい作物ですが、規模拡大によっては定植機や収穫機などの導入も必要となってきます。

稲作(作付面積20ha以上)

稲作は、作付面積によって粗利益の平均が大きく変わってくるという特徴があります。

稲作の農業粗利益は、平均で約265万円です。しかし、これはあくまでも平均であり、20ha以上の作付面積から農業粗利益の平均が約2,253万円と一気に上がります。

さらに、30ha以上の作付面積を持つ場合は、約2,685万円と面積が広くなるほどに利益が高くなっています。

大規模の作付面積を効率的に栽培することで、より高収益が期待できるでしょう。稲作を始める場合は、まず作付できる土地の確保と大型農機の調達が必要のため法人化も視野に入れておきましょう。

さくらんぼ(果樹作)

果樹作で最も高収益の作物は、さくらんぼで、農業粗利益は約79万円です。

しかし、粗利益が低いすももなどと比べても33万円の差しかなく、施設野菜や露地野菜のような大きな差はありません。

また、さくらんぼの労働時間は1139時間で、3000時間近くに及ぶりんごや梨はもちろん、果樹作の全体で見てもかなり少ない労働時間に抑えられています。

時給換算でもさくらんぼが最も高く、高収益な作物です。

儲かる農家・農業は施設園芸を選んでいる

ビニールハウスメーカーでもあるイノチオアグリでは、毎年多くの新規就農者の就農支援をさせていただいています。

では、ビニールハウスを活用して農業を行う施設園芸が新規就農者に選ばれる理由はどこにあるのでしょうか。収益や栽培のメリットについてご紹介します。

施設園芸は露地栽培の2倍以上の所得が期待できる

農林水産省が発表している営農類型別経営統計を見てみると、2018年の10a当たり収支表では、施設野菜作の所得は456,000円となっています。

一方、露地野菜作の所得は173,000円です。施設野菜作の10a当たり所得は、露地野菜作の2倍以上の所得が見込める結果となっています。

施設園芸は、暖房などのエネルギーコストなどの経費がかかりますが、露地栽培に比べて面積当たりの収益が大きく小さな面積でも大きな所得を得られます。

そのため、土地の確保からはじまる新規就農者にとって施設園芸の方がメリットがあると言えます。

関連記事:ビニールハウス栽培に向いているおすすめ野菜・果物5選!

品質・収量が安定している

施設園芸は、ビニールハウス内環境をコントロールできるので、天候や外気温に左右されず安定した栽培環境を作ることができます。そのため、計画的・安定的な収穫が期待できます。

また、ビニールハウス内の二酸化炭素濃度を調整するなど、作物にとってよりよい環境を作りだせます。高品質な作物を栽培したり、付加価値を付けることで収入アップを狙えることは、これから農業をはじめる新規就農者だけでなく、既存生産者にとっても大きな魅力です。

他にもメリットとしては、外の環境から隔離されている点です。病原菌や害虫の侵入をある程度防げ、被害を軽減できます。

しかし、外から持ってくる苗や土に付着して侵入する可能性があるため、完全に防げるとは言い切れません。その他、ビニールハウス内の環境管理を怠ると内部で病害が発生することもあるので注意が必要です。

スマート農業で生産性を向上できる

施設園芸農業にスマート農業を導入することで生産性の向上が期待されています。

スマート農業を活用した環境制御システムを導入すれば、日射量や二酸化炭素濃度、気温、湿度などの複数の環境データを基にビニールハウス内部の設備や装置を遠隔でコントロールすることが可能になります。

これによって作物に適した環境を作るための作業負担が軽減され、収量向上・労働生産性向上を実現しやすくなります。

しかし、スマート農業に関連する製品は高額という傾向になります。
一度に導入するのが難しい場合は、作業の一部を自動化するなど、無理なくできる範囲で取り組みましょう。それだけでも作業負担の軽減を実感できるはずです。

関連記事:スマート農業のメリット・デメリットを徹底解説

イノチオアグリのビニールハウス事業

イノチオアグリでは、お客さまが想い描く理想の農業を実現するため、ビニールハウスにたずさわって50年以上のノウハウと、農業を総合的に支えるグループ事業でトータルにサポートしています。

コスト、栽培作物、栽培環境を踏まえて、お客さまに最適なビニールハウスと内部の付帯設備をご提案します。

儲かる農業の実現に向けてサポートします!

今回のコラムでは、「農業・農家は儲かるのか?」をテーマにご紹介しました。儲かる農業を実現することは、簡単なことではありません。

しかし、ご自身が農業をする・農家になる地域の特性や利益を残せる作物を理解することで実現は可能です。ビニールハウスを活用した施設栽培の場合は、露地栽培と比較して高い所得が見込めることがデータとしても表れています。

イノチオアグリでは、毎年多くの新規就農者や農業参入企業のサポートを行っています。事業計画の相談、栽培作物の選定など、お気軽にお問い合わせください。