ビジネスとしての農業、いわゆる農業ビジネスが話題となっています。以前は、農業は代々続く農家が営む家業という印象でしたが、法改正によって参入しやすくなりました。新しいビジネスモデルも誕生して、昔ながらのイメージが変わりはじめています。

今回のコラムでは、実際に農業はビジネスの選択肢と有りか無しか、起業や新規参入という視点で解説します。
また、農業を取り巻く現状や課題、農業ビジネスの成功のポイントも併せて紹介します。

農業ビジネスとは?

ここでの農業ビジネスとは、農業とその関連する産業や事業を含めたビジネスのことを指しています。農業ビジネスは、動植物を育てる農耕や畜産だけでなく、肥料や農業機器などの開発や製造、農産物の加工や流通、外食産業や金融部門などを含めた内容を意味しています。

農地法改正により注目される農業ビジネス

農業ビジネスが注目されるようになった背景には、農地法の改正があります。
改正以前は、一般の法人や個人が農業に参入することはハードルがあり難しい状況でした。しかし、2009年に農地法が改正され、一般法人でも農業を始めやすくなりました。

改正後も依然として従来の農耕や畜産への参入にとどまる法人が多くみられましたが、今後はAI技術などを活用した新しい取組みにも期待されています。

関連記事:企業の農業参入におけるメリットやポイントを徹底解説

 

新規参入の成功には不可欠な新しいビジネスモデル

農業ビジネスで成功を収めるためには、農業抱える課題を解決する新しいビジネスモデルの考案が近道です。

これまでの農業に捉われない、新しいビジネスモデルを生み出しましょう。既存で別のビジネスを行っているのであれば、既存の技術を活かし、農業の課題を解消することで、成功の道が見えてきます。

新しいビジネスとして農業をはじめる方法

起業して農業をはじめるには、個人で農業事業を立ち上げるイメージが強いですが、その他に農業法人へ就職する方法、栽培とは別の農業関連のビジネスをはじめる方法があります。

個人事業主として農業をはじめる

一般的ですが、起業して個人事業主として農業をはじめる方法があります。

農地の確保や販路開拓などからスタートしなければなりませんが、ある程度ノウハウや栽培技術の習得ができれば自分のペースで自由に展開できるので、ストレスが小さく可能性も大きい方法といえます。

農業法人へ就職する

農業法人への就職は、一般企業と同様に雇われて就農するタイプの方法です。就職先から農業のノウハウを一から教えてもらえるので、いきなり農業を一人でスタートすることに不安を持つ方にはおすすめの方法です。

なぜ注目される?農業ビジネスの魅力

近年、農業がビジネスとして注目されている理由について解説していきます。

スマート農業技術の導入

農業は、高齢化や人手不足の課題を抱えています。これまでの農業は肉代労働というイメージから、体力の面で厳しいと思われることもあり、農業従事者の増加をはばんでいました。

しかし、近年ではロボットやIT技術などを活かしたスマート農業への期待が高まっています。スマート農業の発展は、これまでの農業の働き方を改善して、人材不足も解消されるのではないかと期待されています。

関連事業:スマート農業事業

農作物・加工物のブランド化

インターネットやSNSの普及によって、販路が拡大され、ブランド化された商品が話題を集めて大きなヒット商品となっています。

今後も、農作物や加工品のブランディングやマーケティング戦略を立てて実践していく事例が増えてくるはずです。ブランドを確立することは、単純に売るだけよりも収益アップに期待できます。

地域の耕作放棄地の有効活用と産業の活性化

農業ビジネスでの起業は、地域の発展につながる意義のあるビジネスです。自身の事業の社会貢献性を意識する人には魅力的な側面があるといえます。

また、そのままではいずれ棄てられてしまう耕作放棄地=土地を有効活用することは、その地域の過疎化・無人化を食い止める役割も担っています。

さらに、地域の雇用創出にも貢献できます。農業法人を設立して従業員を雇えるようになれば、従業員の人数分だけ新たな雇用創出につながります。

食料自給率への貢献

農業は、生活に絶対欠かすことのできない「食」に直結する業態です。

もちろん流行り廃りはあるものの、旬も関わる農作物自体の本質的な需要は、他の業態と比べると安定している傾向にあります。

農作物を安定的に生産・販売できるようになるまでには栽培技術の習得は不可欠です。しかし、需要自体が無くなることは考えにくく、収益モデルが確立すれば持続的なビジネスとして成り立つことが可能です。

知っておきたい農業ビジネスへの課題

農業ビジネスへの注目が高まる一方で、農業は長年多くの課題を抱えています。農業が抱える課題と、どのような解決策が求められているのかについて紹介します。

経営やビジネスとしてのノウハウが少ない

これまで、日本の農業は「ビジネス」として育てるノウハウや意識が少ない環境でした。

もとより農業は、天候や自然災害に影響を受ける産業であり、その中で安定して栽培を続けて収穫するということに注力してきました。
長年、農業は農地法などの法律により国が保護してきたという側面もあり、他の業界とは異なり市場経済に影響されにくいう業界でした。
そのため、消費者ニーズの把握や競争による成長への意識や取り組みが遅れていました。

農業は、経営やビジネスのノウハウを持っている人や団体が少なく、いつまで経っても「儲からない」というレッテルを脱却できない状態が続いてしまっています。

農業界の深刻な高齢化

近年は、農業に従事する方の高齢化が続いています。それに伴い、生産量が減少していることも課題となっています。

農業は身体を使う力仕事が多く、常に人の手を必要としているにも関わらず、少子高齢化や若者の都市部への移住が進んだことで就農者数は減少傾向にあります。

関連記事:農業人口の実態とは?高齢化による担い手・人手不足の解決策を解説

農業参入への障壁・リスクがある

農業=儲からない、というイメージが定着しているだけでなく、農業は天候や自然の影響を受けやすく、経験やノウハウがないと難しく新規参入には高いハードルがあると捉えられていることもあるようです。

しかし、近年はテクノロジーの発達による自動化や、6次産業化のように農業周辺での新たなビジネス機会創出もあり、従来の農業に対して抱かれていたハードルの高さは大きく改善されてきています。

農業ビジネスで起業するメリット・デメリット

農業ビジネスで起業することには、他の事業での起業同様にメリット・デメリットがあります。

農業ビジネスのメリット

生産者が不足している

農業ビジネスのメリットのひとつは、生産者や担い手が不足している点です。担い手の不足は、農業ビジネスの課題でもあるとともに、新規参入のハードルを下げるメリットになっています。

国や自治体でも相談窓口を設ける、各種補助金制度など、農業人口を増やすための取り組み多方面に設けられています。
生産者が不足しているビジネスだからこそ、新規参入による農業人口の増加には大きな期待が寄せられています。

技術発展で労働環境が良くなっている

農作業はキツイという印象を持つかもしれませんが、近年ではスマート農業や農業DXなどの技術発展により、労働時間や労働のきつさも大幅に軽減されていますそのため初心者でも比較的簡単に農作業に取り組めるようになりました。

労働環境の改善は、働き手の確保にも貢献しています。農業への注目も高めっているので、これまでに居なかったタイプの人材の確保もこれから増えてくるでしょう。

関連記事:農業DXとは?現状や課題、スマート農業との違いを解説

農業ビジネスのデメリット

人とのつながり・栽培技術が必要

一から農業ビジネスはじめる場合、人とのつながりや栽培技術などがない状態からでは成功が難しいかもしれません。農地選びからはじまり、苗の選び方や栽培の手順など、栽培技術は同業の先輩や仲間から学ぶことが多くなります。

新規参入ではこうした人とのつながりや栽培技術の習得に時間がかかる傾向にあるので注意しましょう。

初期費用がかかる

農業ビジネスをはじめるハードルとして初期費用の高さがあります。農業をはじめるためには、栽培をするための農地、ビニールハウスや機材の費用、技術習得のためにも費用がかかります。

また、事業開始後も肥料や農薬、人件費などが発生します。農業が収穫までには時間がかかるため、その間は収益がありません。このコストによって新規参入のハードルは上がり、不安に思う方が多くいらっしゃるのも事実です。

知っておきたい!農業のビジネスモデル

農業ビジネスは、農作物を生産するだけではなく、新しいビジネスモデルで起業するのもひとつの方法です。自分の強みや実績を生かせる分野を農業と掛け合わせてビジネスモデルを作ることで、他社との差別化を図ることもできます。

農業に関する周辺ビジネス

農業の新しいビジネスモデルとして、栽培以外の農業の周辺ビジネスがあります。例えば、農作物のインターネット通販、また、それにまつわるマーケティング、商品企画、ブランディングなどです。

良い農作物を栽培することと同様に、認知度や購買意欲を高め、新たな販路を作るビジネスも、これからの農業には必要です。

6次産業化

農業の6次産業化もビジネスモデルとして注目されています。
6次産業とは、地域資源と産業が融合した新しい産業を指します。農作物の生産する1次産業、生産物を加工する2次産業、加工品の販売や飲食、宿泊などの3次産業、これらを掛け合わせて「6次産業」と呼びます。

これまでのビジネスモデルとしては、農村レストランや収穫体験、観光業などがあります。1次産業から発展させることで、農産物に付加価値を与えられます。

農業ビジネスで起業して成功させるポイント

農業ビジネスでの起業を検討ている人のために、成功のポイントを紹介します。

農業ビジネスに必要な技術習得

農業ビジネスで栽培を行う場合には、栽培や経営の技術習得が必要です。
習得する方法としては、農家さんへの弟子入り、農業法人への就職などさまざまです。

農業研修機関や各地の農業大学校などで農業を学ぶ方法もあります。
農業大学校は全国の41道府県に設置されています。その地域の天候や風土・農作物に合った農業を学ぶことができるので、農業ビジネスの拠点として考えている地域の大学校に入学することはメリットが大きいです。

多角的な情報収集

農業ビジネスを起業するにあたり情報収集は欠かせません。常にアンテナを張り巡らし、積極的に情報を得ましょう。

国や自治体からの情報だけでなく、同業者や地域の農家さんとのコミュニケーションも密に取っておくことが大切です。

経営分析を繰り返す

農業ビジネスを成功させるにはあらゆる方面から経営分析をすることが重要です。

栽培で気になる部分は専門機関へ調査を行い、うまくいかない原因や課題の明確にすることが必要です。さらに、先輩農家さんなどへ相談してみることで、解決方法を教えてもらえる場合もあります。

関連事業:営農サポート事業

農業ビジネスの起業には補助金を活用しよう!

農業ビジネスをはじめるにあたり、多額の初期費用が必要となります。
栽培をするための農地、ビニールハウスや各種設備など、どれも高額になってきます。そのため、自己資金で用意することは現実的ではありません。

日本では、農業人口が減少している状況を打破するために、新しく農業をはじめる人に対して、国や自治体などがさまざまな経済的支援策を用意しています。

別途コラムでおすすめの融資・補助金について解説していますので、参考にしてみてください。

関連記事:農業の資金調達は難しい?新規就農におすすめの融資・補助金を解説

イノチオアグリは農業ビジネスでの起業を応援します!

イノチオアグリは「農業総合支援企業」をコンセプトに、ビニールハウスに携わり50年以上、培ってきたノウハウを活かし、これから農業を始められる方をご支援します。

農業ビジネスでの起業をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。みなさんのお悩みやご相談に専門知識を持った社員が対応します。